
東日本大震災発生から10年が近づいてきました。
甚大な被害を受けた南三陸(三陸南部 気仙沼市本吉町~松島)。
わたしはは2013年より、雄大な自然にくるまれた豊かな歴史文化遺産を復興に励む人々と交流しつつ探り続けています。
このたび、電子書籍『カラー新版 南三陸の山城と石塔─東日本大震災後の調査でわかったこと』を刊行いたしました。
拙著を紹介する形で、「海」のイメージが濃い三陸の南部について、リアスの海にせり出した山と小さな里に残された山城と石塔(板碑)などの歴史文化遺産から地域の様子の変遷をふりかえってみたいと思います。

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拙著『南三陸の山城と石塔』(河北選書 2018年)はお陰様で完売いたしましたが、増刷の予定はないとのことでしたので、出版元の了解を得てKindle版でカラー増補改訂版を作りました。
内容
幾多の災害や領主の滅亡により中世以前の記録はほとんど残っていない地域ですが、多数存在する城館跡と石塔(板碑)に着目してその知られざる歴史と文化を探ります。前著にはなかった重要文化財を含む3D画像(松島「頼賢の碑」・金剛舎利供養結衆板碑、淨勝寺五輪塔など)での可視化によりビジュアルに説明するよう心がけました。

地域としては気仙沼市本吉町を追加して奥州藤原氏の系譜にある淨勝寺や浄福寺の五輪塔の謎や高精度の赤色立体地図を用いて田束山山麓に金の採掘跡が広大に分布している可能性に触れております。また、旧淨勝寺所在地で出土した臨済宗の板碑群についても代表的なものの3D画像を掲載しております。
震災10年目を迎える現在、三陸南部の景観は大きく変貌しました。本書にはこの間の貴重なカラー写真を多数収めました。一般向けでありますが、オールカラーのため情報量は前著より大きく増えております。定価は499円とお安くなっておりますので、ご覧いただければ幸いです。
目次
第一章 戦乱の南三陸を語る志津川の山城と石塔
本格的に「南三陸の中世」に取り組んだのは2013年の新井田館跡の復興関連発掘調査でした。志津川を代表する大雄寺の大型板碑2基は大津波で流出し、傷つきながらもボランティアに救出されましたが現在も一帯の復興は遅れ横たわっております。その向かいにある本吉氏の居城、朝日館跡は三陸南部沿岸では最大級の平山城で最下段には南北朝時代禅宗系の銘文豊かな「妙樹禅尼逆修板碑」が立っています。








第二章 波伝谷から北上川へ─戸倉
戸倉の海岸は天女伝説がぴったりの美しくも謎めいた魅力的なところです。戸倉神社は古称「小鋭神社」。12世紀のころ横山不動尊は近くの浜に漂着した船から運んだという伝承が双方にあります。


第三章 入谷物語─東北の「遠野」
入谷地区は 「東北の遠野」 ゴールドラッシュ伝承の大型板碑が山中に。
打囃子の祭礼が素敵です。





第四章 歌津のルーツ─田束山
戦国時代に栄えた伊里前湾に集中する山城群。 ルーツは田束山にあった。頂上付近の奥州藤原氏期の経塚群の周辺に三つ寺跡と多数の子院、さらに金色に輝く板碑群があった。



第五章 姿を現した女川・御前浜の武士団
女川の街から北へ 東日本大震災津波の後に発見された原位置の板碑群は調査後保存。


第六章 雄勝の海に生きた人々の証
千葉大王伝説が生きている浜に雄勝法印神楽が舞う。





第七章 本吉町─奥州藤原氏の文化を継ぐ
奥州藤原氏滅亡後、佐藤継信・忠信の母が立てたという大型の五輪塔が、さらに円福寺の教線が。


第八章 まとめ
キーワードは山城・石塔・寺院。牡鹿半島を含め三陸南部沿岸各地の入り江に形成される板碑群は海の土豪たちと松島の霊場との交流を示すものではないか。






★トピックス
修験の系譜をひく神楽が牽引する「復興」





付章 歴史文化遺産を探った記録から─東日本大震災復興の歩みとともに
大変な状況の中で「歴史文化遺産」を探る私に地元の方たちは皆喜んで協力してくれました。とりわけ女性たちは輝いておりました。


きりこプロジェクト ENVISI Arts envision Liveswww.yamauchi-f.com






2012年から2021年まで南三陸の歴史文化遺産を探る中で大きく変遷した景観。それは必ずしも住民の方の総意にそうものではなかったと思いを、交流を通じて感じております。
残された歴史文化遺産を自然とともに探り、保護し、活用する、交流する段階が来ているのではないでしょうか。
(※以上の写真・図は全てわたしの撮った写真、作成したものですが著作権の関係で本書に掲載したものはわずかになっております)
詳しくは下記拙著でご覧ください
239ページ 2021年2月26日発売。Amazon Kindle 499円
付記(2021.5.23)
在庫のないはずの旧著『南三陸の山城と石塔』が再び出回っていることに気づいた。
下記の誤りがあるのでお詫びして訂正したい(カラー新版の方は訂正の上、増補したものです)。

付記2021.6.15
旧著『南三陸の山城と石塔』について下記画像の違法な無料ダウンロードサイトを見つけました。
著者も出版社も許可しておりません。
フィッシング詐欺の可能性もありますので警察に連絡いたしました。決してクリックしないでください。

お陰様で高い評価をいただいております。誠に有難うございます(7月14日追記)。