石巻市鹿又大巻前・建武元年(1344)の板碑

鹿又大巻前・建武元年銘板碑(3D画像テクスチャ 田中則和)

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石巻市鹿又大巻前・建武元年(1344)銘の板碑(3Dソリッド画像反転 田中則和作成)
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 草むらにひっそりと立つ板碑を地元の方に教えていただいた。頭部に釈迦如来?を象徴する梵字アク、その下に阿弥陀如来を賛美する仏教詩(偈)が「一切諸菩薩/八万諸正教/皆是阿弥陀」と刻まれている(/は改行記号)。初句は剥がれ、「十方三世仏」とあったと推定され、読みの例として「十方三世の仏(みほとけ)、一切諸(もろもろ)の菩薩、八万の諸の聖教は皆是阿弥陀なり」とされる(加藤政久氏は『石仏偈頌辞典』)。同氏は鎌倉・南北朝時代の例を挙げ、浄土宗や時宗で重要視された偈としている。
 板碑の下部には「建武元年」、さらに右左に分けて、母の三十三年忌の追善が造塔の目的であることを刻んでいる。粘板岩製の中世の重要モノ史料である板碑(石製供養塔)である。
板碑は堤防の盛り土で西側斜面にあるが、盛り土前は北上川の川縁に立ち、中世の溝で区画された屋敷地の北端に立っていた可能性もある。現在も住民に大事にされている線刻五輪塔板碑はここから約114m付近の溝区画(赤色立体地図で判別)の内側に位置する。
 迫る大規模堤防工事の影響が心配される。本来の場所から離れるということは地域の歴史を失うことである。

周辺の主な板碑(谷口宏充氏提供・アジア航測作成2011赤色立体地図をベース+田中データ)

  ※↑字が小さいのでクリックして見てください。※谷口先生より掲載許可済

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(2024.6.13再構成)